第5回課題公演/劇団あおきりみかん「つぐない」@G/pit(2017.7.7-7.17)
by Midori M
<感情>と<概念>の罪悪感
罪悪感とは<感情>である。広辞苑によると「自分が罪悪を犯したと思う気持ち」とあ る。自分と他者の関わりにおいて自分の内側に沸き起こる感情である。また、キリスト教 における罪悪感とは、絶対的存在である神の前では民は生まれながらにして罪人であると いう、キリスト教の根底を成す<概念>である。
劇団あおきりみかん『つぐない』は、とある教会で偶然出会った、罪悪感の無い女と罪 悪感に苛まれている男を中心とした会話劇である。女の幼少期の、両親の離婚で生じる妹 への罪悪感<概念>は、やがて女の中で妹が絶対的存在(=神)に変化し、償いは自己を 満たす行為となり、社会常識から過剰に外れていく。いっぽう男は、男の妹が神父への恋 心から洗礼を受けたが恋叶わず、失意の内に不慮な事故死をした現実を受け入れられず、 妹を守れなかった罪悪感<感情>を抱かえたままでいる。女は男に告白をしていくうちに <概念>が剥がれていくのを感じる。また、男も女の告白を聞きながら<感情>を鎮めて 自身を赦していく。
小さな教会での女と男の出会いは偶然ではない。女が、女の父親と同 じ懐かしい匂いを男から嗅覚で感じ取って、人間的な感情を呼び起こすための必然であっ た。 この二つの罪悪感の存在は、カトリックに理解を示しながらも非洗礼でいる者が抱く 違和感なのか、と想像した。
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