推カケレビュー講座(2020.3.15①事前レクチャー 4.22②講評会)
講師:綾門優季氏(「キュイ」主宰・劇作家・批評家・全国学生演劇祭審査員)
ー<必須課題>ーーーーー
オレンヂスタ『黒い砂礫』について、約1000字で劇評を書いてください。地元の某新聞に掲載されるものと仮定し、ほとんどの読者はオレンヂスタを観ていないという想定とします。新聞なので、字数があまりにも少ない、または字数があまりにも多いものは載らないことに注意してください。
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【執筆者・Eさん】
名古屋の小劇場七ツ寺共同スタジオで上演された「黒い砂礫」。狭い空間ながら、従来とは異なる魅力の舞台に仕上げていた。今のようなコロナ禍の初期で公演を延期する劇団もちらほら目立ってきた時期。受付スタッフがマスク姿で消毒液を持って待ち構える物々しい雰囲気。会場に入ると 大勢の観客はいつもと違い全員マスク姿でお喋りもなく静かで独特の緊張感が漂っていた。舞台に目を移すと、真っ黒な段差が組まれている。上手奥に向かってエレベーションが作られ山頂に見立てられている。まるで漆黒の山がそびえ立っているかのようだ。登山のシーン、街のシーンと空間を区切って使い分けるように駆使していた。 物語は、山の頂である舞台奥の空間を使い前地悠子の山頂からの軽快なリポート風 景からスタート。場面転換後は舞台下手前、夫である前地弥太郎の研究室。雰囲気はうって変わり、無酸素単独で有名人となった悠子を取材しようとしているジャー ナリストの五十嵐亜美が登場。取材対象として追うことで彼女そのものに迫ろうとしている事を告げる。そのあと訪問してくるのが前池悠子の大学の山岳部同期の屑木和伸。無鉄砲な挑戦を繰り返している彼女の独行を彼自身も山に登りながら見 守ってきた。 そして、彼女の次回の単独登頂は世界最高峰のK2。屑木もまたもその独行を見守っていたのだが、体調を崩した彼女の救援を求めるために屑木が彼女と離れた後、ゆうこは姿を消してしまう。悠子がなぜ危険を冒してまで山を目指したのかを探るべ く五十嵐は彼女の登山仲間を訪ね歩き悠子の心のうちを明らかにしていく。そして、屑木、弥太郎、五十嵐とその仲間たちは彼女の心の真実を探るため、彼らも世 界最高峰K2を目指す。 学生時代にはそれほど目立っていなかった一人の女性登山家の生き様を通して描かれているが、ジェンダーは重要なテーマの一つだ。女性は厳しい山の頂には到達することができないのか、女性が超えられない象徴として山の頂が女性が挑戦しても超えるのは並大抵の努力では打ち破れないもの「ガラスの天井」として表現されているかのようだ。悠子自身は、逆に女性を武器にスポンサーを勝ち取り世間での名声を勝ち取ってきた。そしてその女性としての頂きに挑戦することで結局命を落としてしまう。なんとも皮肉だ。ラストで晒された背中はいかにも女性らしく、女性登山家としてのプライドを表現したのか。
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