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執筆者の写真推カケ☆批評塾

推カケレビュー講座「オレンヂスタ/黒い砂礫」レビュー必須課題①

推カケレビュー講座(2020.3.15①事前レクチャー 4.22②講評会)

講師:綾門優季氏(「キュイ」主宰・劇作家・批評家・全国学生演劇祭審査員)


<必須課題>ーーーーー

オレンヂスタ『黒い砂礫』について、約1000字で劇評を書いてください。地元の某新聞に掲載されるものと仮定し、ほとんどの読者はオレンヂスタを観ていないという想定とします。新聞なので、字数があまりにも少ない、または字数があまりにも多いものは載らないことに注意してください。

ーーーーーー


【執筆者・Aさん】 →Aさんの感想  カラコルムNO.2(K2)はエベレストに次ぐ世界第二位の高さと共に、世界最難関で知られる山峰だ。カラコルムはモンゴル語で「黒い砂礫」を意味する。会場である七ツ寺共同スタジオは全方が黒塗りされ、舞台上の黒面と段差がK2の生命の存在を許さない厳正さをかもし出す。  「美人すぎる登山家」として名を馳せていた前地悠子(宮田頌子)は女性初の冬期K2単独無酸素登頂を目指している際、行方不明となる。同行していた屑木和伸(松竹亭ゴミ箱)が必死に捜索するも、見つかったのは一冊の手帳とモノクロ写真だけだった。彼女の登頂をスポンサードしていた株式会社まおの水戸弘明(中居晃一)社長は、遭難後一ヶ月を過ぎ資金回収の為、回顧展を企画しようとしていた。かつて女性だけの登山隊「なでしこ隊」(アタックは失敗)に所属していた五十嵐亜美(伊藤文乃)は水戸の会社でカメラマンとして働きながら、登山家としての悠子の足跡を取材して回る。アポなしで 訪れた信州大の研究室では、悠子の夫である前地与太郎(今津和也)に対し、下山した屑木が事の次第を告げに訪れていた。屑木は与太郎に事実を告げながら「一緒に悠子を探しに行こう」と誘う。正気ではないと断る与太郎に屑木は例の手帳と写真を見せる。そこにはCTスキャンで写し出された「新たな命」が描かれていた。驚きを隠せない与太郎は彼女の足跡を明らかにする為(そして真相を探る為)、仲間と共に捜索隊を結成する。数々の苦難を乗り越えながら一行はついに彼女の遺体を発見する。そこには凍傷とは裏腹に、永久凍土でビーナスのように輝き続ける彼女(背中越しに映る半裸の役者)の姿があった。  それにしてもなぜ悠子は山に登り続けたのだろう。彼女の登山家としての人生は決して 順風満帆なものではなかった。お天気お姉さんと揶揄され、お荷物扱いだった学生時代。 「セブンサミッツ単独無酸素登頂」「なでしこ隊によるエベレスト攻略」と派手な挑戦を 繰り返したがどれも未完であり、さらには自分の失敗を苦に父親が自殺してしまう。引く に引けない状況の中、それでも彼女を向かわせたものは何だったのか。  死の間際、彼女は走馬燈を目にする。幼かった頃の妹、与太郎、なでしこ隊、支えてく れた人々、新しい命。人生において偶然は必然であり、それを宿命づけるのは自分自身で ある。偶然山に関わることになった彼女は、いつしか山に関わることで自分の生きる意味 を見出していたのかもしれない。

(1,010字)



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